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東京地方裁判所 平成11年(ワ)12493号 判決

原告 日清ファイナンス株式会社

右代表者代表取締役 北原龍之介

右訴訟代理人弁護士 樋口一夫

同 内藤貴昭

被告 総武流山電鉄株式会社

右代表者代表取締役 小宮山英一

右訴訟代理人弁護士 早乙女芳司

同 本多哲哉

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  被告は原告に対して、金五四九〇万四五〇〇円及びこれに対する平成一〇年八月一日から支払い済みまで年一四パーセントの割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

第二事案の概要

一  (争いのない事実)

1  原告はリース業を目的とする会社であり、被告は、地方鉄道業などを目的とする会社である。訴外エコス株式会社(以下「エコス」という。)は、省エネシステムの販売などを目的とする会社である。

2  エコスと被告は、平成九年五月一日、エコスECSシステム導入契約(以下「本件導入契約」という。)を締結した。その内容は、エコスによるエコスECSシステム(以下「エコスシステム」という。)と呼ばれる発電装置を導入するとともに、エコスシステムのメンテナンスを約すものである(甲第一号証)。

本件導入契約には、以下のような内容の規定がある。

(一) 導入するエコスシステムは、エコスコージェネレーションシステムECS60EM二台とする。

(二) 設置予定日を平成九年八月三一日とする。

(三) 被告は、原告との間でリース契約を締結するものとし、リース料月額を四九万八〇〇〇円として三か月分をエコスに預託する。

(四) 工事竣工前に、エコスの責任で工事の施工が困難となった場合、被告は契約を解除することができる。この場合、エコスは、被告の預託したリース料、被告の負担した費用を即時被告に返還する。

(五) 工事竣工前は、被告は、解約金を支払うことで解約することができるが、工事竣工後の解約はできない。

(六) エコスは、メンテナンスサービスを行うものとし、メンテナンスサービスは、代理人に代行させることができる。

(七) エコスは、メンテナンスサービスをする代理人を変更することができる。

なお、エコスは、本件導入契約の締結に際して、エコスシステムは、訴外ダイハツディーゼル東日本株式会社(以下「ダイハツ社」という。)との共同開発にかかるものであり、メンテナンスはダイハツ社が行うことをセールスポイントのひとつとしていた(甲第三号証)。

3  原告と被告の契約

原告と被告は、平成九年五月一日付で次のようなリース契約(以下「本件リース契約」という。)を締結した

(甲第二号証)。

リース物件 エコスコージェネレーションシステム一式

リース期間 平成九年九月一日から平成一八年八月三一日(ただし、物件借受証の引渡日を始期とする。)

リース料 五三七八万四〇〇〇円(消費税含まず)(消費税込みの金額は、五六四七万三二〇〇円)

(月額五二万二九〇〇円消費税込み)

支払日 第一回 平成九年九月三〇日に三ケ月分(合計一五六万八七〇〇円)

第二回 平成一〇年一月から毎月六日までに口座振替による

合意管轄 東京地方裁判所

本件リース契約には以下のような内容の規定がある。

(一) 被告がリース物件を受け取ったときは直ちに検査した上、借受証を原告に交付する(第四条一項)。

(二) 天災地変等原告の責によらない事由により物件の引渡しが遅延または不能になったときは、原告は一切の責任を負わない(第四条三項)。

(三) 売主(エコス)の責に帰すべき事由により物件の引渡が遅延または不能になったときは、原告は売り主に対する請求権を被告に譲渡し、原告は被告に対し責任を負わない(第五条三項、二項)。

4  エコスは、工事に着手しないまま約定設置期限である平成九年八月三一日を徒過したうえ、平成九年九月九日に至って、次のような契約内容の変更を被告に対して申し入れ、被告はこれを受け入れた。

(一) 発電機を六〇キロワット(ECS六〇EM)一台、一二〇キロワット(ECS一二〇E)一台に変更する。

(二) 燃料タンクの容量を二キロリットルに縮小する。

(三) 設置工事竣工期限を平成九年一二月一五日に延期する。

5  エコスは、平成九年一二月七日に本件機械を搬入し、同月一五日には給油のためのタンクの組立を開始したが、被告が再三催告したにもかかわらず、右変更後の竣工期限後の平成一〇年二月に至っても電気制御盤が設置されていなかった。

6  被告はエコスに対し、平成一〇年二月二六日到達の書面をもって本件導入契約を解除する旨の意思表示をした。

二  (争点)

1  被告の主張

(一) 本件導入契約と本件リース契約との関係

(1)  本件リース契約の前提である被告とエコスとの導入契約は、エコスの債務不履行を理由に有効に解除され、消滅するに至った。そして、本件リース契約は右導入契約と実質的に一体であり、右導入契約の解除によって本件リース契約自体も当然に消滅すると解すべきである。

(2)  仮に、本件リース契約が右導入契約とは一体ではなく、別個の契約であるとしても、被告はエコスとの導入契約の解除による目的物の引渡不能を理由として、本件リース契約を解除した。

(3)  仮に、履行不能による右解除が認められないとしても、本件リース契約、少なくともリース料請求権は、目的物の引渡があることを条件に効力が生ずるいわゆる停止条件付の契約である。したがって、目的物の引渡なき以上、その効力が発生することはありえない。そして、本件目的物の引渡を主たる内容とする本件導入契約は、債務者であるエコスの債務不履行により解除消滅したのであるから、その時点で本件リース契約の停止条件は成就されないことが確定的となり、同契約の効力自体ないし少なくとも本件リース料支払請求権は発生しないことが確定した。

(二) 本件導入契約解除について

被告が本件導入契約を解除した理由は、<1>エコスの著しい履行遅滞、<2>目的物がエコスの説明に反し、製造後二年を経過した中古品であったこと、<3>エコスが目的物のメーカーをダイハツ社である旨偽って説明していたこと、<4>エコスが目的物のメンテナンス業者をダイハツ社である旨偽って説明していたこと、<5>右各理由を総合したエコスとの信頼関係の破壊であり、解除は有効である。

2  原告の主張

(一) 本件導入契約と本件リース契約との関係について

目的物の引渡しが完了していないのは被告がエコスからの目的物の受領を不当に拒絶したことによるものであるから、被告が、引渡し未了及びこれにより物件借受証の交付がないことをもってリース料金の支払義務がないと主張することは信義則に反する。

(二) 本件導入契約の解除について

被告がエコスに対する契約解除の理由とした前記点は、以下のとおり、いずれも理由に乏しく、とうてい解除事由足り得ない。

(1)  エコスは、平成一〇年二月ころ本件導入工事のほとんどを完成し、後は制御盤を載せるためにわずか数日分だけの作業が残っていたにすぎず、同年二月五日ころの時点では、エコス、被告、原告間において工程表、消防検査立会いに関するファックスのやり取りなど、稼動を予定した具体的な動きがされていた。さらに、二月一八日には被告の本社ビルにて、右三社に加え、ダイハツ社も交えて今後の具体的な予定と稼動スケジュールの打合せが行なわれた。したがって、エコスが履行遅滞を理由として被告から平成一〇年二月二六日到達の書面によって解除通告を受けるいわれは全くなかった。

(2)  本件機械は、大量生産、販売がなされるようなものではなく、製造から二年を経過しただけでは性能にも変化はなく、製造年月日が古くても中古ではない。

(3)  本件機械は、ダイハツ社の指示によって日産ディーゼル株式会社が製造したエンジンを株式会社大阪精密電気工作所が購入し、同社が製造している発電装置と組み合わせてパッケージ化したものであり、ダイハツ社は、エコスの要求する出力を常用で発揮できるエンジン機種について大阪精密とともに選定し、エコスの要求する仕様を大阪精密に伝え、その都度若干の変更を検討するよう依頼するなどしていたのであり、ダイハツ社が本件機械製造について少なからぬ関与をしていたことは明らかであって、本件機械を「ダイハツ社製」と呼ぶか否かは言葉の問題であり、少なくともエコスに対して解除をなしうるような事由にはなり得ない。

(4)  ダイハツ社は省エネルギー管理センター株式会社と保守業務基本契約を作成するなどしており、本件機械のメンテナンスに関わっていたから、被告の解除理由は根拠がない。仮に、ダイハツ社がメンテナンスに関わっていないとしても、メンテナンスについては、エコスは被告の承諾なくしてメンテナンスサービス代理人を変更できることになっているのであるから、本件機械のメンテナンスを誰が行うかということを解除の事由とすることはできない。

第三争点に対する判断

一  本件導入契約と本件リース契約との関係について

本件リース契約は本件導入契約とは一体ではなく、別個の契約であるから、本件導入契約が解除されても、直ちに、本件リース契約が消滅したと認めることはできない。

また、本件リース契約は、前記第二の一の3の(二)及び(三)記載のとおり、原告の責によらない事由または売主(エコス)の責に帰すべき事由により物件の引渡が遅延または不能になったときにも、原告はその責任を負わない旨規定しているから、エコスの責に帰すべき事由により本件導入契約の履行が遅延し、または不能となって、本件導入契約が解除されたとしても、本件リース契約を解除することはできない。

しかし、本件リース契約においては、被告がリース物件の引渡を受け物件借受証を原告に交付した時からリース期間が開始するものとされているから、リース料請求権は、目的物の引渡及び物件借受証の交付を条件に効力が生ずるいわゆる停上条件付の請求権であると解される。したがって、目的物の引渡または物件借受証の交付がない場合、信義則上、債務者である被告がその条件成就を妨げたと認められる事情のない限り、原告は、リース料を請求することはできないと解される。

したがって、被告主張のとおり、本件導入契約が、債務者であるエコスの債務不履行により有効に解除されたとすれば、被告は、エコスに対しリース物件の引渡を拒むことができるから、本件リース契約の停止条件は成就されないことが確定的となり、本件リース料支払請求権は発生しないことが確定することとなる。

二  本件導入契約の解除について

1  前記第二の一(争いのない事実等)記載のとおり、エコスは、平成九年一二月七日に本件機械を搬入し、同月一五日には給油のためのタンクの組立を開始したが、被告が再三催告したにもかかわらず、右変更後の竣工期限後の平成一〇年二月に至っても電気制御盤が設置されていなかったこと、被告はエコスに対し、平成一〇年二月二六日到達の書面をもって本件導入契約を解除する旨の意思表示をしたことがみとめられるから、本件導入契約は、債務者であるエコスの債務不履行により有効に解除消滅されたものと認められる。

2  これに対し、原告は、被告主張の解除事由はとうてい解除事由足り得ないと主張し、エコスに債務不履行はなく、または、解除権の行使は権利の濫用に当たるものとするので、以下、この点について検討する。

(一) 原告主張のとおり、エコスは、平成一〇年二月ころ本件導入工事のほとんどを完成し、後は制御盤を載せるためにわずか数日分だけの作業が残っていたにすぎず、同年二月五日ころの時点では、エコス、被告、原告間において工程表、消防検査立会いに関するファックスのやり取りなど、エコスの竣工を前提とした具体的な活動がされていたことが認められる。

(二) しかし、前記第二の一(争いのない事実等)記載のとおり、エコスは、工事に着手しないまま約定設置期限である平成九年八月三一日を徒過したうえ、平成九年九月九日、設置工事竣工期限を平成九年一二月一五日に延期する旨合意したものの、その期限までに竣工に至らなかったことが認められるほか、ダイハツ社は、平成八年八月一〇日以降エコスとの取引を中止しており、エコスシステムのメンテナンスを行っていないこと、平成一〇年二月一八日、被告の本社ビルにおいて、原告、被告、エコスに加え、ダイハツ社も交えて会談がもたれた際には、ダイハツ社がメンテナンスを行っていない旨発言したことが認められる(乙第六号証)。これらの事情に照らすと、右(一)記載の事実があったとしても、被告による解除権の行使が権利の濫用に当たるということはできない。

後者の点について、原告は、ダイハツ社がメンテナンスに関わっていないとしても、メンテナンスについては、エコスは被告の承諾なくしてメンテナンスサービス代理人を変更できることになっているのであるから、本件機械のメンテナンスを誰が行うかということを解除の事由とすることはできない旨主張するが、エコスはメンテナンスをダイハツ社が行うことをセールスポイントのひとつとしていたから、このような事情を含めて解除権の行使が権利の濫用に当たるか否かを判断することができるものというべきである。

(三) なお、本件弁論の全趣旨に照らすと、原告は、既にエコスに対してエコスシステムの売買契約に基く売買代金を支払っていたものと認められるが、本件リース契約には、売買代金の支払時期についての定めはなく、また、エコスの債務不履行があった場合、原告が支払った売買代金について被告が負担する旨の定めもないことに照らすと、原告は、自己の危険においてエコスに対し売買代金を支払っていたものと認められる。そうすると、原告がエコスに対し売買代金を支払ったことを考慮に入れても、被告による解除権の行使が権利の濫用に当たるということはできない。

三  結語

以上によれば、被告の本件導入契約の解除は有効にされたものと認められ、原告主張の諸点を考慮しても、原告との関係で右の解除が信義に反してリース料請求権の停止条件の成就を妨げたものと認めるに足りる事情は認められない。

したがって、結局原告の請求には理由がないこととなるから、主文のとおり判決する。

(裁判官 伊東顕)

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